プラスチック成形加工学会

一般社団法人プラスチック成形加工学会 第17期会長

梶原 稔尚(九州大学)

17th_president

 この度,佐藤勲前会長の後を引き継ぎ,第17期の会長を拝命いたしました。1988年12月に本会の設立総会が東京都で開催されたとき,私は博士後期課程を修了して九州大学で2年目の助手をしていました。以来,ずっと本会の活動に携わらせていただき,歴代の会長,理事,会員の皆様のたゆまぬご努力のお陰で,本会が着実に発展を遂げてきたことを見てきました。その私が,会長の重責に身を置くことになり,身の引き締まる思いです。理事,会員の皆様のご協力のもと,2年間精一杯努力をしてまいる所存です。

 さて,本会の一番の特徴は,会員の皆様の学会に対する熱い思いと積極的な活動への貢献であると思います。特に企業会員の皆様の本会への大きな貢献は,工学系の他の学会から羨ましがられる程です。設立後30年が過ぎましたが,これから40周年,50周年へと続いていく本会の発展と深化のために,新たな模索をしていく必要があると思います。就任にあたって,私自身が現在考えていることをいくつか述べたいと思います。

 本会の役割として,プラスチック成形加工の学理を確立・発展・普及させること,それを通じてプラスチック成形加工分野の産業の発展に大きく寄与することがあげられます。学術の発展と産業の発展がうまくかみ合っていくことが望まれます。本会の現状を見ると,学術団体としての更なる発展を成し遂げるための問題の一つに,論文投稿数の減少があげられます。昨年の成形加工誌では,数か月にわたって論文が掲載されない状況が続き,論文賞も母数の少ない状況での審査となったことは寂しい限りです。大学人事の状況が30年前とは大きく変わり,国内誌への大学からの論文投稿は,他学会でも厳しい状況です。最近、企業からの投稿も少しは増えてきましたが,十分ではありません。研究発表会での座長推薦や論文特集号の企画などの対処療法的な取り組みは,他学会も含めてやられていますが,根本的な解決にはなっていません。掲載されることの投稿者のメリット,それを読む読者のメリットが真に認識されないと,根本的な解決にはならないと考えます。投稿・査読システムの改良も必要ですが,本会でメリットが認識できる論文の在り方を考え,従来の学術研究論文誌の体裁を踏襲するのではなく,本会にふさわしい形を柔軟に模索することも必要であろうと考えます。

 二つ目は,学会の領域拡大の意識と,それに基づく経済基盤の強化です。本会はこれまでも順調に会員数を伸ばしてきました。時代とともに変わっていく注目テーマに対し,研究発表会での特別セッション,講演会等の企画行事,成形加工誌における特集記事の掲載などを通して,領域の拡大を実現しながら学会も成長してきました。しかし,成形加工に関連する領域はまだまだ大きいとの認識は多くの人に指摘されています。注目を集める魅力的なテーマは,関連するいろいろな学会に取り込まれようとします。本会の独自性を出しながらも,いちはやく学会活動に取り込んでいく意識をもち,それを容易に達成できるシステムを構築することが重要と思われます。現在,プラスチック成形加工に関する専門領域としての活動は,専門委員会がそれを担っています。プラスチック成形加工の基盤をなす学問体系をベースとした委員会の継続的活動や,新しい注目分野に対応する委員会の新設など,これまでも十分な活動実績を積み上げてきました。一方で,専門委員会の制度ができて20年が経過し,現制度のみではやや窮屈な活動形態も出てきました。いろいろな形での活動が可能になり,それを通じて新しい領域の拡張,ひいては学会の拡大につながっていくことが重要であろうと思います。

 最後に,ITを上手に利用しながら魅力的な学会活動を展開することが,特に若い世代にこの分野に興味を持ってもらうために必要と思われます。4年前に,アメリカ再生医療学会に参加したとき,ポスターセッションは大型モニターを用いたデジタルポスターでした。大会アプリを使って,スマホでプログラム進行をチェックするのはもちろん,研究内容のディスカッションやコンタクトもスマホで行うことができることにびっくりした記憶があります。現在では,国内会議などでも取り入れられてきていますが,それを実現するには,システム構築を委託できる経済的基盤が重要です。二つ目に述べた学会の領域拡大も,このような活動を可能にするために必要と考えている次第です。

以上述べたこと以外にも,やるべき課題は少なからずあります。会員の皆様が本会に深く関与したいという熱意がこれからも持続するような魅力と包容力のある学会にしたいと考えています。気軽にいろいろなご意見・アイデアを学会に投げかけていただくとともに,ご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。